タイの洪水、あれから。

タイ洪水のニュースもあまり報道されなくなりましたが、どうなっているのでしょう?

最新情報では、洪水による死者は594人(JETRO、11月18日)、
被災者284万人(タイ内務省、11月10日)、
被害を被ったのは全76県のうち実に58県に及んだとのことです。

ご存じの通り、懸命の「首都優先」「つけ刃」の洪水対策のおかげで、
バンコク中心部の浸水は免れたようですね。
外務省の渡航延期勧告も11月16日の見直しで洪水に関してはなくなったとのことです。 

ふれんどしっぷASIAの支援先である「あかつきの家」(山岳民族のための通学の家)と
「サパーンファンTJCセンター」(日本出稼ぎ女性の子ども=タイ日国際児の支援)
があるチェンライ県は、幸いなことにほとんど被害がなかったそうです。
TJCセンターの如田さんによれば、最近のタイ国内では、
日本からの励ましや支援協力についてすごくたくさんの報道があるそうです。 

さて、この洪水被害拡大の原因ですが、大きく分ければ
(1) 台風による大雨
(2) 熱帯雨林の破壊
(3) 洪水対策と国土計画の欠如
となるようです。
参照:http://matome.naver.jp/odai/2131968029958488101

(1) に関しては、今年は繰り返し台風がインドシナへ半島に上陸し、
タイ北部で6月〜9月の雨量が平年の5割増しに達したそうです。
チャオプラヤー川などの大河川はたくさんの支流を次々を飲み込み、
ゆっくりと長く流れるために、簡単には水が引きません。
現在も北部のダム貯水率は100%かそれ以上のところが多いようです。
昨年の渇水経験からダム放水のタイミングが遅れたことも災いしたとのこと。 
日本でほとんど報道されませんでしたが、インドシナへの台風の影響で、
カンボジアベトナムでもかなりの洪水被害があったそうです。


(2) については、元々は(1950年頃)国土の7割程度が森林であったタイが、
90年には25%にまで減少し、
現在ではさらに低い森林率になっているだろうということです。
本の森林率は、こんなに破壊されたようでも67%はあるのだそうです。
こういう話になるとよく山岳民族の焼畑農業が原因として取り上げられますが、
もっと組織的に大きな森林伐採をしてきた違法林業や開発の歴史があるので、
全体像をよく見ないといけないと思います。 

(3) については、タイでは元々洪水が年中行事、毎年、中流下流域のどこかで
洪水が起こっていることから危機意識があまりないということがあげられていました。
バンコクは水をかぶってあたりまえのデルタ地帯です。
(今回の洪水で首都機能の移転案が出ているのは賢明な話?)
加えて、開発を急ぐあまり、それまで洪水の調整機能を果たしていた広大な田を
工業団地などに造成してしまったことも関係しているそうです。
自動車部品、家電製品に関連して、日本や世界経済への影響が大きく報道されましたが、
そのような工場進出がそもそも洪水被害拡大の原因でもあったという見方です。  

長くなりました。難しい話のお口直しに3つ。

インラック首相の洪水対策での指導力不足が問われていますが、その原因の一つが政争。
今回も首都バンコクのスクムバン知事(野党)との意見の対立が目立ち、
争いと対策といったいどちらが大事なの?ってタイ国民にも不評だそうです。
政治家がおしなべて自分の選挙区への対策を優先して対立する様子を、
11月14日のニューヨークタイムズでは「タイでは政治家も災害の一部になる」
と表現したそうです。なんだか、原発震災の国と同じですねえ。 

11月18日のバンコク週報(http://www.bangkokshuho.com/news.aspx?articleid=13220)では、
運輸事務次官宅への強盗犯容疑者のうち2人が逮捕された記事を載せています。
その一人は「次官宅の洋服ダンスには総額70〜100億バーツの現金が詰め込まれたバッグが複数あった。
あまりに量が多すぎで、そのすべてを持ち出すことはできなかった」
と供述しているとのこと。
で、2億バーツ強しか持ちだせなかったらしい。(それでも約5億円・・・)。
タイでは運輸関連の許認可権限は大きく、
政治家の蓄財について話題になっているそうです。

これはおもしろいです。
このブログでも9月24日(http://d.hatena.ne.jp/friendshipasia/20110924)に
たくましいタイ女性について取り上げていますが、
洪水の中でタイ人の生きる知恵はすごい!

こちらをご覧ください。→http://thai-flood-hacks.tumblr.com/
冷蔵庫のドア(断熱材でよく浮くらしい)を水に浮かしてテーブルにし、
ビールを楽しむ人。
ペットボトルをペットにくくりつけておぼれないようにする写真。
どこにでもあるたらい、ビニール袋、タイヤなどを使った不思議な発明品の数々に
感動です!