フィリピンでのハンディキャップ

マニラでいつも泊めてもらい、交流をしている車いす楽団のROWですが
彼らは小児まひや事故、その他疾病が原因で身体にハンディキャップを抱えています。

しかし、メンバーの多くは、とても自立的で、小さい子も自分のことを、自分でします。
料理は、寮母さんが作ってくれますが
食べる前の机のセッティング、食後の食器洗いと机まわりの片づけ、
部屋の掃除、ゴミ捨て、洗濯が当番制になっており規律正しく生活をしています。

これは創設者のシスター・ロースが
「自分でできることは自分でやろう」という姿勢をとっていることにあります。
食後に片づけをしたあとは、それぞれが宿題をする時間となっており
就寝時間まで、宿題や身の回りの片づけをしています。

彼らと過ごしていると、ハンディキャップのことを忘れるくらいに
とてもしっかりしている(「しっかりする」というのが、なんだかありきたりの言葉なのですが)のです。


今回の訪問で、さらにフィリピンの寛大さを感じたできごとがありました。
メンバー数名とショッピングモールに遊びに行ったときのこと、
そのショッピングモールは、買い物をするだけではなく、食事スペース、遊ぶスペースなど
一日中楽しめるようになっていました。

そこで、体をベルトで縛り、ワイヤーに吊るして
建物から建物へ移動するアトラクション(?)があり、それに乗ろうという話になりました。
ベルトで縛るハンモックのようなものに座るには
車いすを降りて、その椅子まで移らなければなりません。
また、到着の建物では、また車いすに移り、7段ほどの階段を下りねばなりません。

しかし、係の人たちは嫌な顔をひとつせずに、3,4人で抱えてワイヤーのところまで移してくれ、
また、到着の建物では車いすにもどし、みんなで車いすを抱えて階段を下りてくれました。
結局全員このアトラクションを楽しむことができたのですが
日本だったら、どうだったのだろう、とそのとき思いました。
(日本でどうなっているのかは、わかりません。もしかすると、日本でも乗れるのかもしれませんが)

足がまったく動かない、また、足の一部がない人でも
禁止することなく、乗せてくれ、談笑しながら車いすも運んでくれる
その寛容な対応に驚くと同時に、すごい国だなと。


また、今回のフィリピン訪問で彼らのたくましさをさらに発見しました。
ふだん車いすで生活をしている何人かは、
オートバイの横にサイドカーのついた乗り物を運転し、
同じく車いすの家族や、子どもを乗せて、バイク移動をしているのです。

まず、自分が車いすに乗り、サイドカーに乗り込みます。
そこからバイクの運転席に腕の力で移動し、自分の車いすをたたみます。
サイドカーには別の車いすメンバーが乗れます。
目的地に到着したら、車いすをまた広げて、運転席から車いすに乗り移ります。
バイクのおかげで、移動範囲も広がり、またいちいちタクシーに乗らなくてもいいようになりました。
その手際のよさと、行動力には驚くばかりでした。


いつ行っても、みんなのたくましさを新発見し
フィリピンの寛大さに気がつきます。


2003年にROWメンバーが日本に来日公演にきたとき、星野富広さんにお会いしました。
星野さんは言いました
「障がいがあるということは、不便ではあるけれども、不幸ではない」
星野さんとの出会いはROWメンバーにとって、印象的な出来事の一つでした。

彼らは、最近その「不便さ」すら乗り越えている、
そんな気もしています。