【シリーズ】わたしがフィリピン・タイで出会った思い出に残る人

*この記事はふれんどしっぷASIAスタッフによるリレー投稿です*
*フィリピン、タイで出会った個人的に思い出深い人を紹介します*

すでに何回か続いている「わたしがフィリピン・タイで出会った思い出に残る人」。
今回は僕が筆をとらせていただきます。

僕のなかで思い出に残った人はというと、
ホームステイでお世話になった家の男の子、マルヴィンくんでしょうか。

彼と初めて会ったのは、僕がフィリピンの体験学習に参加した2008年のことです。
このときマルヴィンくんは12歳前後だったと思います。

この年は体験学習のプログラムの1つとしてホームステイを用意してもらっており、
先輩と一緒にフィリピンの一般家庭にお邪魔しました。
そのおうちにいた子どもたちの1人がマルヴィンくんでした。
ここの家は(フィリピンはどこもそういう家庭が多いのかもしれませんが)結構な大家族で、
上の兄弟の何人かはすでに働きに出ていました。
先日のブログに出てきたメイさんもその1人です。

さて、せっかくホームステイに招待してもらいましたが、
当時僕は相当に英語が不自由で(今もそうだろうというつっこみはなしの方向でお願いします)
旅の指差し会話帳と電子辞書を常に携帯していなきゃ落ち着かないような状態でした。
そのため少々コミュニケーションをとるのに苦労していました。
ところがこの指差し会話帳、意外な使われ方をします。

僕がちょっと本を置きっぱなしにしたら、
マルヴィンくん、いつの間にやらその本を開いて熱心に読んでいます。
どうしたのかなと思ってちょっと声をかけてみると得意満面、元気よく

「オニイサン タカ!」

と呼ばれました。思わず噴き出しそうになりました。
どうやら日本語で僕を呼ぼうとしていたようですが、
現地の言葉では、お兄さんに当たる言葉は名前の前につけるのが普通のようです。
そのため妙な具合になってしまいました。
もちろん正しくは「タカお兄さん」。

とはいえ、笑っては失礼です。言語を苦手としている僕に対して、
彼は積極的に日本語を勉強しようとしているのですから。
むしろその精神を見習わなければなりません。腰をおろして日本語の勉強会の開始です。

はじめこそおかしな勘違いがあったものの、彼はあっという間に日本語を覚えて行きます。
「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」はお手の物です。
「カラバウ」などの明らかに向こうの言葉をそのまま日本語にしただけのものも
日本語として覚えてしまい、どうフォローしようかと頭を大いに悩ませました。
指差し会話帳、僕が会話の助けに使うよりもマルヴィンくんの日本語の教科書として
活用されていた時間のほうが長い気がします。

彼の記憶力は大したもので、2年後再び訪れたときも「タカお兄さん」と呼んでくれました。
また、そのとき別れ際にノートにアドレスを書いてもらったのですが、
そこにはメールアドレスとともにローマ字で「Arigato」と書かれていました。

あとから知ったのですが、このマルヴィンくん、学校でメダルをもらうほど成績優秀らしいです。
それを支えているのは、もちろん勉強して、家族を楽にしたいという思いもあるのでしょうが、
日本語を次々覚えていったときに見せた好奇心なのではないでしょうか。
いまだに英語がうまく話せない僕ですが、彼を見習って
もっと英語に好奇心を持って学んでいければと思っています。

(ひの)